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就業規則作成業務

1.就業規則とは?

 

1−1 概要

 

 

 複数の従業員を使用する企業においては、個々の従業員の労働条件がバラバラであれば、統制のとれた労務管理をすることはできませんし、職場の規律の維持もできません。そのため企業では、社内の統一的なルールを定める必要があります。また、従業員間で不公平が生じないように労働条件を整備する必要があります。これらを明文化したものが就業規則です。
 また、作成された就業規則は、企業側と従業員側の双方が守らなければならない、企業の法律となります。よって、その作成は慎重に行う必要があります。

 

1−2 作成・届出義務について

 

 

 労働基準法等の規定をまとめると、就業規則の作成・届出義務は下記のとおり定められています。

常時10人以上の労働者(注1)を使用する事業場(注2)は、就業規則を作成し、労働者の過半数で組織する労働組合又は労働者代表の意見書を添えて(注3)、所轄労働基準監督署に届け出なければならない。

(注1)「常時10人以上の労働者」とは、一時的に10人未満になる場合でも常態として10人以上の労働者を使用する場合をいい、パートタイマーやアルバイト等も含んだ数をいいます。派遣労働者については、労働契約を締結している派遣元事業場においてカウントします。
(注2)就業規則の作成は企業単位で作成するのではなく、本社と支店、出張所など場所が異なる事業場ごとに作成・届出するのが原則です。ただし、本社の就業規則と他の事業場の就業規則が同一内容の場合、本社で一括して就業規則を作成・届出することもできます。
(注3)就業規則を監督署に届出する際には、労働者代表の意見を聴いて、その内容を記載した意見書を添付する必要があります。「意見を聴く」とは、同意を得なければならないとか、協議しなければならない、といったことが要求されているのではありません。使用者側が労働者に意見を求め、その意見を集約するというプロセスが重視されています。行政通達によれば、就業規則の内容に反対の意見書を添付したとしても、他の要件を具備する限り、就業規則の効力発生については影響はないと解されています。

 上記を参考にしていただき、労働者数が10人以上になった場合は就業規則の作成をご検討ください。
 なお、就業規則の作成・届出義務に違反した場合には、30万円以下の罰金の対象になりますのでご注意ください。

 

1−3 就業規則がない会社のデメリット

 

 上述したように、労働者数が10人以上の会社では、就業規則の作成義務があります。とはいうものの、労働者数が10人以上ではあるが就業規則を作成していない会社もあるのではないでしょうか。
また、「うちの会社は労働者数が10人未満だから、就業規則は作成しなくてもいい。」と考えている会社もあるのではないでしょうか。
では、

@労働者数10人以上で、就業規則を作成していない会社

A労働者数10人未満で、就業規則を作成していない会社

 @とAの会社は労働基準法上どのような違いが出てくるでしょうか?それは、@の会社は就業規則の作成義務違反のため、罰金の対象になります。一方、Aの会社は就業規則の作成義務がないため、罰金の対象にはなりません。以上が両社の違いということになります。
 ところで、@とAの会社には民事上、労働者との権利義務関係で共通した問題があります。
 それは、就業規則がないことで、労働者との間にトラブルが生じる可能性が高まるということです。
 以下に就業規則がない会社のデメリットの具体例を記載します。

 

(1)懲戒処分ができない

 就業規則がない場合、会社は懲戒処分ができません。
 労働者は労働契約を締結して会社に雇用されることによって、会社に対し、労務提供義務を負うとともに、これに付随して「服務規律」を守る義務を負います。
「服務規律」とは、会社の秩序を維持するために労働者に課される一定の行動規範です。下記にその一例を記載します。

・従業員としての地位を不正に利用して、自己または第三者の利益を図ってはならない。
・酒気を帯びて勤務してはならない
・会社内において、政治活動および宗教活動を行ってはならない。
・会社内において、演説・集会・文書等の配布を行ってなならない。
・会社の名誉や信用を毀損するような事項をWEB等に投稿してはならない。
・兼業の禁止

 上記のような「服務規律」に違反があった場合、会社はその違反の程度に応じた下記の「懲戒処分」を行うのが通例です。

・けん責(始末書の提出)
・減給(始末書を提出+賃金の減額)
・出勤停止((始末書の提出+出勤停止しその期間の賃金不支給)
・降格(始末書提出+職位の解任もしくは引き下げ等)
・諭旨解雇(懲戒解雇相当事由がある場合で本人に反省が認められるときの解雇)
・懲戒解雇(予告期間を設けることなく即時解雇)

 会社が労働者を懲戒するには、あらかじめ就業規則において懲戒の種別および事由を定めておくことが必要です。
 このため、就業規則がない場合、会社の秩序を乱す行為があっても、原則何の罰則も与えることができず、違反した労働者の行動を改善することが難しくなります。

 

(2)普通解雇の際、トラブルになる可能性が高まる

 労働者は会社に対し、労務提供の義務を負いますが、ケガやうつ病等によりその義務の履行が不完全な場合に労働契約を終了させることを「普通解雇」といいます。
 重大な秩序維持義務違反を犯した労働者に対して、労働契約を終了させる「懲戒解雇」、と比較して考えていただければわかりやすいと思います。
 通常、会社が労働者を普通解雇する場合、「普通解雇事由」を就業規則に定めておき、該当した事由をもとに労働者を解雇します。
 下記にその一例を記載します。

・精神または身体の故障等により業務に耐えられないとき
・能力不足または勤務成績不良で就業に適さないとき
・勤務態度が不良で注意しても改善しないとき
・協調性を欠き、他の従業員の業務遂行に悪影響を及ぼすとき

 「普通解雇は就業規則がなくても行うことができる」という見解もあると思いますが、解雇をめぐり裁判になった際、就業規則に普通解雇事由を定めておけば有利になることは間違いありません。
 また、就業規則に普通解雇事由をさだめておけば、やむなく労働者に会社を辞めていただく際、不当解雇と主張されるリスクが大幅に下がると思います。その理由は、就業規則に普通解雇事由が明示されているので、労働者の側の納得感が大きく違ってくるからです。就業規則を作成することは、感情的な争いになる前の予防策としても大変役立つと思います。

 

(3)雇用保険関係の助成金がもらえないことがある

 助成金は、返済する必要がないまとまった資金を受給できるため、事業主にとっては非常に魅力的なものです。しかし、助成金の申請をする場合、就業規則の添付を要することがほとんどですので、注意が必要です。
 なぜなら、多くの場合、助成金を受給するには、職場に一定の人事制度が存在することが前提になり、行政機関は人事制度の有無を、就業規則に規定されているかどうかで判断しているためです。
 よって、就業規則がない場合、受給できない助成金も出てくるとお考え下さい。

 

2.就業規則作成のポイント

2−1 会社の実情に合っているか?

 

 現在、インターネットで検索すれば、就業規則のひな形が無料で手に入るようになりました。今、この記事を読まれている方の中にも無料のひな形を参考にして、自社の就業規則を作成しようと考えている方がいるかもしれません。しかし、安易に就業規則を作成してしまうと、後に、大きな禍根を残す可能性があります。
 以下で、会社の実情に合った就業規則作成の重要性について考えていきます。

 

まず、就業規則作成の大前提として、下記の事項をご理解ください。

@就業規則は会社側・労働者側の双方が守らなければならない会社の法律である。
A合理的な労働条件が定められた就業規則を労働者に周知した場合、就業規則の労働条件が労働契約の内容となる。

 上記1〜2を頭の片隅に置いていただいたうえで、無料の就業規則を使うリスクを下記に記載します。

  1. 無料の就業規則が大企業並みの休職・復職制度、退職金制度、賃金制度を定めている場合、中小企業では運用が難しい。
  2. 無料の就業規則の場合、会社の実態に合っていないことがある。(服務規律、懲戒処分、変形労働時間制)
  3. 就業規則の労働条件が、労働契約の内容となるため、それを守らない場合、労働者に訴えられる可能性がある。
  4. 法律改正等に対応していない可能性がある。

 一度作成して効力が発生した就業規則は、原則として、労働者との合意なく労働条件を不利益に変更することが認められていません。
 特に、賃金や退職金といった労働条件は、安易に変更することが認められませんので、最初に作る際にしっかり将来を見据えて会社の方針や実情を反映させることが重要になります。

 

2−2 当事務所の作成方針

 

 当事務所では、会社を守るために必要な、下記の点を踏まえた就業規則をオーダーメイドいたします。

当事務所が作成する就業規則の特徴

1. 問題社員や労務トラブルから会社を守る、リスク回避型就業規則
2. 法律の範囲内で無駄な割増賃金を削除できる就業規則
3. 会社の規模や実情を反映させた就業規則

 

1.問題社員や労務トラブルから会社を守る、リスク回避型就業規則

 社員の数が増えると、それに伴い、問題行動を起こす社員が一定割合、必ず含まれることになります。そのため、常日頃から社員に服務規律の周知を徹底し、違反があった場合は、懲戒規程に基づき公正に処分することが重要です。
 当事務所では、各会社の独自かつ様々な事態を想定した「服務規律」「懲戒規程」を作成しリスクに備えます。

 

2.法律の範囲内で無駄な残業代を削減できる就業規則

 固定残業手当、変形労働時間制、残業の許可制を組み合わせた就業規則を提案させていただきます。その際、会社の季節による業務の繁閑の状況、ひと月の平均残業時間、賃金の支払額等を考慮して、ベストなものにいたします。
 ただし、固定残業手当の導入には、社員に対して説明し、そのうえで同意を得る必要があること等、慎重に進める必要があるため、通常より作成に長い期間がかかります。
 また、無理な残業代の削減は社員の反感を招き、「やる気の低下」や「離職」につながることもあるため注意が必要です。

 

3.会社の規模や実情を反映させた就業規則

 無料の就業規則では、社員が業務外の病気等で入院した場合の休職期間を6か月としているものも見かけます。中小零細企業にとって、社員を6か月間休職させたうえ、その間の社会保険料を支払うのは大きな負担になると思います。長期休職者に対しては、会社の規模に合った「休職・復職規程」と「「退職規程」を設ける必要があります。
 また、規模の違う会社の「賃金規程」や「退職金規程」を少しアレンジして作成した就業規則の場合、後日、高額の賃金や退職金を請求される可能性があります。
 当事務所では、会社の規模や実情に合った、無理のない就業規則を提案させていただきます。

 

3.就業規則作成の流れ

 当事務所で就業規則を作成する際には、下記のような流れになります。

 

ヒアリング
 会社に訪問し、始業・終業時刻、賃金の計算方法、社員の区分等の会社の基本事項および職場におけるルール、問題点等をお聞きします。

就業規則第1案の作成および修正

 ヒアリングを基に就業規則第1案を作成し、これを「たたき台」として、会社の担当者様と各規定を1条ずつ確認・修正し、会社の実情に合った就業規則を作成していきます。
 また、この機会に労務管理全体の見直しを検討する。

就業規則第2案の作成
 第1案の修正を基に第2案を作成し、確認していただきます。修正があれば、再度、修正して完成に近づけていきます。

労働者代表の意見を聴く、意見書の作成
 第2案について労働者代表の意見を聴取し、その意見を記した書面(意見書)に署名押印をしてもらいます。この際、意見書に反対意見が記載されていても、第2案を修正しないことは可能です。

労働基準監督署への届出

 就業規則に労働者代表の意見書を添えて、労働基準監督署へ届け出ます。

社員への周知
 就業規則は周知しなければ、労働契約内容を拘束する効力を生じないとされています。そのため、作成した就業規則は、常時、会社の見やすい場所に掲示または備え付ける等してください。

 

代表者 山田哲矢
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